帆船模型を作る仲間のすべてとはいいませんが、その多くが海洋小説(もちろん帆船時代の)を読んでいることは間違いないでしょう。その嚆矢といえるのが高橋泰邦さんの訳した『ホーンブロア・シリーズ』(1973年2月28日刊行)です。それから『フォックス・シリーズ』が続き『ボライソー・シリーズ』『ラミジ艦長シリーズ』などがつぎつぎと刊行されました。
こういった英国系の海洋小説は多くの史実が種になっているといわれています。膨大に残された当時の航海日誌、戦闘詳報などを見てそのハイライトを小説の中でいくつかつなぎ合わせるという手法は十分に考えられることです。また周囲のお偉方、提督とか艦長にも実在の人物がいくらでも登場します。
ということで海洋小説に、小説とはいっても学ぶことがかなり多いのではないかと私は常々思っていました。小説の中で疑問に思うことや興味のあることを拾い出し、わからないことは調査して書き始めたのです。
書いてみると海洋小説はいろいろな事柄の宝の山であることが分かってきました。我ながらおお納得、と思うことがいくらもあります。そう思っているときにザ・ロープのホームページ編集者である中山さんから、「みんなに読んでもらおうよ」とお誘いを頂きました。中山さんは収集癖があるのではないかと私は密かに思っているのですが、わが担当の紀行やエッセイ集を充実させようとの熱意に満ちみちています。
そういった次第で、衣を改めてザ・ロープのホームページにこのシリーズが登場します。これを読んで「海洋小説も悪くないな」と思っていただければ、望外の幸せというものです。
2019年 (令和元年) 11月10日
福田 正彦
目 次
まえがき
1. ワイブズ
2. ミスターロバーツ
3. マスター・アンド・コマンダー
4. 昇任試験
5. コモドアと提督
6. エイブル・シーマン
7. 一般水兵とパウダーモンキー
8. 英国海軍の給料
9. 拿捕賞金
10.帆船時代の食事(1)―水兵の食卓(前編)
11.帆船時代の食事(2)ー水兵の食卓(後編)
12.帆船時代の食事(3)ー提督の食卓(前編)
13.帆船時代の食事(4)ー提督の食卓(中編)
14.帆船時代の食事(5)ー提督の食卓(後編)
15.間奏曲ー食事のあと始末ー
16.指揮権と指揮系統、そして責任 [前編] —指揮権の委譲—
17.指揮権と指揮系統、そして責任 [中編] —指揮系統—
18.指揮権と指揮系統、そして責任 [後編] —指揮官の責任/軍法会議—
《お断り》
本稿はまえがきにも述べてあるとおり、主として海洋小説にもとづいて綴ったものであり、史実とは異なる内容もあり得ることをあらかじめご了承ください。
2019年12月03日
ザ・ロープのホームページ『読み物・エッセイ』にユーモアとエスプリに溢れたエッセイを書き下ろししてくださっている福田正彦さん。その紀行やエッセイには、ホーンブロワーがたびたび登場する。