帆を使用することで遠くに行けるようになり、漁場も岸辺から沿岸沖や遠洋へと拡大しました。さらに漁法の改良開発および市場環境(流通・保管・加工など)により漁船は進歩してきました。
例えば網を曳く強い帆走力、魚を新鮮なうちに港に運ぶため高速性、荒波に耐える強靭な船体、船上加工の設備など、さまざまな要求特性に適した漁船が活躍してきました。
帆船が主役の時代、地域毎の漁法に適した個性あふれる機能美が漁船の魅力です。
43-19
小早型 鰹一本釣り漁船
建造年/年代: | 19世紀後半 |
国籍/建造地: | 日本 |
縮尺: | 1/48 |
キット/自作: | Scratchbuilt |
製作者: | 佐藤 憲史 |
製作期間: | 5ヶ月 |
江戸時代に船足の速い小早型軍船より発達した焼津のかつお一本釣り漁船。動力船が出現するまで活躍した。ウッディジョーのキット「徳川軍船 八丁櫓」を購入し、図面を50%に縮小し、飛行機の客室に持ち込み可能なサイズに仕上げた。船体は ほぼキットの図面に従ったが、細部は焼津港に保存されている復元船や焼津市・歴史民俗資料館の大型模型を参考にした。
43-20
土佐和船 20尺チヌ(黒鯛)釣り舟
1989 | 現代 |
国籍/建造地: | 日本 |
縮尺: | 1/10 |
キット/自作: | サーマル工房 |
製作者: | 関口 正巳 |
製作期間: | 5週間 |
湾内から沿岸部での漁ができるように耐波性を重視した和船で、釣り船には欠かせないカンコという生け簀を装備している。高知ではチヌ(黒鯛)釣りに使用され、左手で櫓を操作し、右手に竿を持ち、巧みに舟を操りながら釣り上げるハイカラ釣りという伝統的漁法が用いられている。模型は地元高知産の杉材を使用したキットで、レーザー・カットされた焼け焦げ面をサンディングするだけで組み立てられる、非常に作り易いキットと言える。組立て説明書では瞬間接着材の使用を記されているが、感想としては木工ボンドをお奨めする。
43-21 (特別展示)
ヴァレリアン
建造年/年代: | 1923 |
国籍/建造地: | イギリス |
縮尺: | 1/48 |
キット/自作: | 自作 |
製作者: | 木村 護 |
製作期間: | 1年1ヶ月 |
英国のブリクサムを母港とするトロール漁船である。この地域でトロール漁法が発展し、最盛期には300隻もが活躍していた。トロール網を強力に牽引できる帆装と荒波にも耐える優れた船であった。木目や外板の繋ぎ目が見えるようにするため、船体表面の凹凸や隙間を無くすように作った。蒸気キャプスタンの形状や構造が理解できず、インターネットで調べて製作した。Underhill(英・帆船研究者)の図面に記載が無い部分や艤装などは「Sailing Trawlers」の本を参考にした。
43-22(特別展示)
マリ・ジェンヌ
1989 | 1908 |
国籍/建造地: | フランス |
縮尺: | 1/50 |
キット/自作: |
Billing Boats |
製作者: | 羽仁 勝喜 |
製作期間: | 10ヶ月 |
フランス北西部ビスケー湾の漁港コンカルノの“びんちょうマグロ漁船”。漁法は引き縄漁で、船の両舷前方に20m余の竿が有り、真鍮ワイヤーと釣り針、疑似餌が左右7つずつ付けられ、漁の時に水平に降ろされる。19世紀末に沖合での漁に適応するため、頑丈さとスピードを併せ持つこの様な形に落ち着いた。乗員12名で50~60tの大型帆装漁船。キットの図面、取説が不充分で、木の材質にも満足できず、AAMM(仏国立海事博物館友の会)の図面も使って半スクラッチビルドになった。
43-23
フェカン港のニシン漁船
建造年/年代: | 19世紀 |
国籍/建造地: | フランス |
縮尺: | 1/50 |
キット/自作: |
Soclaine |
製作者: | 川島 壮介 |
製作期間: | 1年 |
19世紀フランス沿岸で多く使用された快速のラガー・タイプニシン漁船。モデルはフェカン港で使用されたもので船尾に大きなマスト受けと10本アームの巻上げ機を持ち、漁場に到着するとミズン・マスト以外をたたみ、仕掛けた漁網を巻上げながら網の方向に船を引き寄せるもので、それ以外の漁では帆を張り網を曳きながら漁をする船である。漁船は地味だが特有の面白い構成をしているのに興味をもち作った。キットは初心者向けに大味なので、主にAAMM (仏国立海事博物館友の会)の図面に沿い修正して仕上げた。従って、大部分自作である。
43-24(特別展示)
ノーラスボタンのボート
1989 | 17世紀 |
国籍/建造地: | ノルウェー |
縮尺: | 1/20 |
キット/自作: | Billing Boats |
製作者: | 関口 正巳 |
製作期間: | 6ヶ月 |
1799年に建造され、アメリカ商船をフランスの私掠船から保護するのが任務であった。米英開戦後、1813年に18隻のイギリス捕鯨船や商船を捕獲し大きな損失を与えた。1814年イギリス海軍と交戦し長射程の砲撃で大きな損失を受け降伏した。
43-25(特別展示)
バスクの捕鯨ボート
建造年/年代: | 15世紀 |
国籍/建造地: | スペイン |
縮尺: | 1/16 |
キット/自作: | Panart |
製作者: | 東 康生 |
製作期間: | 8ヶ月 |
バスクの男たちの勇気の象徴として伝えられる捕鯨は世界最初の商業捕鯨として15世紀ビスケー湾で始まっている。極度の乱獲から僅か100年で資源を枯渇させ、以後、外洋に広がってゆく。1901年5月14日最後の一頭が捕獲された喜びがいまに歌い繋がれている。歴史に名を残した船、市井に埋れた使役船にもそれぞれの物語が秘められている。工作の手を休め、歴史の世界に遊ぶのも、船作りの楽しみである。
43-26(特別展示)
ウィリー・ベネット
1989 | 1899 |
国籍/建造地: | アメリカ |
縮尺: | 1/32 |
キット/自作: | 自作 |
製作者: | 田中 武敏 |
製作期間: | 1年 |
アメリカ、ワシントンの東、チェサピーク湾で底引き漁具を使用して牡蠣採りをする漁船。専用の漁具を海底に下ろして底引きし、巻上機で引き揚げて採取する。ユニークで美しいフォルムの漁船に興味を持ち、モデル・シップウェイの図面を基に自作した。主としてペアウッド(梨材)を使用。甲板上にある多種の金属部品のハンダ付けに苦労した。また、ステイ、巻き上げ機のロープは銀と黒塗装で実船のように仕上げた。
43-27
ブルーノーズ
建造年/年代: | 1921 |
国籍/建造地: | カナダ |
縮尺: | 1/64 |
キット/自作: | Billing Boats/自作 |
製作者: | 大川原 一隆 |
製作期間: | 5 年 |
カナダで1921年に建造された美しいスクーナーです。もともと漁業用として作られましたが、同じ用途のスクーナーで競う国際レースに出場、優勝してカナダの誇りとなりました。前回出典した作品に手を加えレース時の姿で完成させました。キットの船体を利用し、細部はモデル・シップウェイの図面を参照した。レースに必要でない装備は全て取り外して、走りに特化したブルーノーズをご覧ください。
43-28
ブルーノーズ
1989 | 1921 |
国籍/建造地: | カナダ |
縮尺: | 1/64 |
キット/自作: | Model Shipways |
製作者: | 田中 嘉明 |
製作期間: | 1年2ヶ月 |
カナダの漁船スクーナー。ウィリアム・ルーの設計で、ノバ・スコシアの造船所で1921年に進水した。漁船スクーナー・レース国際大会で数々の輝かしい成績を残し、カナダの歴史において、最も速い漁船スクーナーとしてコインのデザインにもなっている。流線型の船体と大きな縦帆8枚で構成される姿は、帆船の中でも群を抜いて美しく、世界の帆船モデラーに愛されている。それ故、今回は少しでも差別化すべく、船体の銅板貼りや帆のツートンカラー化を試みた。結果、時代考証的には多少の疑問も残るが、なかなか満足できる「マイ・ブルーノーズ」に仕上がった。
43-29(特別展示)
チャールズ・モーガン
建造年/年代: | 1841 |
国籍/建造地: | アメリカ |
縮尺: | 1/64 |
キット/自作: | Model Shipways |
製作者: | 栗田 正樹 |
製作期間: | 800 時間 |
アメリカ捕鯨産業が絶頂期の1841年に進水、1921年退役までの80年間に37回の捕鯨航海を行なった。航海期間では、出港から帰港まで4年という記録がある。700隻以上の捕鯨帆船が活躍した中で唯一生き残り、現在コネチカット州ミスティック・シーポート博物館に係留保存されている。老朽化対応の修繕が完了した2013年に38回目となる記念航海が行われた。
43-30
カニ漁船
1989 | 1952 |
国籍/建造地: | ドイツ |
縮尺: | 1/33 |
キット/自作: | Billing Boats |
製作者: | 赤道 達也 |
製作期間: | 1年 |
典型的なドイツのトロール船(底引き漁船)です。 この種のボートは、北ドイツ海岸の小さな港で見られます。 1952年に、ドイツ・コクスハーフンで建造されました。 総登録トン数は約50トン。全長18.35m。ビーム長5.35m、マストの長さは9.9m。モーターは2気筒のディーゼルで200馬力。速度は10-12ノットです。 乗組員は3名で、漁具に2枚のカニ捕獲用網を積んでいます。 デンマークのRomo島と、ドイツの西海岸周辺で漁をしています。